2013年7月8日月曜日

中二病的表現入門

世間での「中二病」の理解については少なからず誤解が見られるが、まあ簡単かつ不正確な説明をすれば「中学二年生前後で一部の人びとに見られる、カッコイイっぽい設定やキャラクターや行動を自らに導入しようとする傾向」とでも言えば良いだろうか。
例えば
・傘を二刀流で持ち、自分にはそれなりに技能があると思い込む
・意味もなくカッターナイフを持ち歩く。そして高確率でそれを逆手に持つ
・傍観者(神の視点)を気取り、感情を抑えて過ごす
・目に見えない、或いは巨大な力を持った何かと戦おうとする/戦っていることにする
・哲学的(往々にして反社会的)な思索に没頭し、独自の思想に到達する(というより、既存の思想に独力で到達する)
・武器、兵器、毒物、格闘技(特に武道ではなく護身術)などに無駄に関心を持つ/詳しくなる
・特別な動機もなく専門的な分野に手を出す
・やたらと難しい、或いはネガティブな漢字や言葉や英単語、或いはギリシャ語・ラテン語・アラビア語・ドイツ語などを覚える(例→漢字:/贖罪/乖離/饒舌/躊躇/矜恃/憐憫、言葉:糜爛剤/穹窿/歔欷/2,3,7,8-テトラクロロジベンゾパラジオキシン、英語:eliminate/disappear/vanish/expulsion など)
・威厳を求める
・秘められた能力を持っていると思い込む

こんな感じか。あとは言葉にし難いものも多数存在するがここでは略。
総じて黒歴史になる。中二病を経験した者同士だと少しはマシになるものの、他人に話すと本気で引かれるレベルのものも少なくない。「あー俺昨日から全然寝てないわー」「やべー、ノー勉だー(テスト直前)」などとは格が違うイタさなのである。

ちなみに俺の場合は
・毒物(有害物質)→ダイオキシン
・原子力、核兵器
・英語
・ロシア・海外文学(ドストエフスキー)
・哲学(非宗教)、反社会的な思想
・権力批判(教育委員会、国家)
・数学、プログラミング
・格闘
・傍観者、嘲笑
などの属性があった(ここでは挙げられない恥ずかしいものは墓場まで持って行くつもりだ)。
俺は運動が苦手で行動力も無かったお陰で思想・知識系に走ったのでかなりマシだ。魔法・オカルトとか陰謀系にハマっていたら人生の3年分の記憶を消したかもしれない。


前置きが長くなったが、ここでは俺にわかる分野の中二的表現の解説をサンプルを交えて試みるものである。
具体的には、言葉を難解に置き換えていくようなものである。
神話などの固有名詞を多用する呪文的表現は俺には無理なので、そちらは身近な知り合いで詳しそうなのを探されたし。

●間接的な言及
対象そのものに言及せず、その特徴や機能への言及から対象を聞き手に推測させる。具体例を挙げる。
・『刻まれし歪みの修正者(刻まれし歪みを修正せし者)』(アイロン)
シワ→なかなかとれない折れ目→刻まれた歪み、というような特徴への言及、シワをとる→元の状態に復活させる→修正するもの、というような機能への言及などが活用されている。

●物質として実在しない現象や、実在を否定する語
中二病患者に光、闇などの語が好まれるのはこれが理由だと考えている。他にも、空間、時空、記憶関係など「確かに存在するが物質としての観測が困難/不可能」であるような抽象的な概念なども好まれる。
実在の否定に関しては、漢字として 滅/忘/虚/失 などを含む熟語が多用されやすい。
・『闇に堕ちた輝き』(ブラックライト)
目に見えない・見えても暗いという意での"闇"と、堕落による能力(ここでは物質を人に見せる能力)の喪失から連想される"闇"をかけている。また、前述のように『闇に堕ちし光』などと直接その正体に言及せず、「輝き」と特徴から推測させている。
・『無限の光集いし交差』(焦点)
無限という抽象的だが存在自体は容易に想像できる語、「光」という言葉などが、中二マインドをくすぐる。特別凝った表現ではないが、汎用性があり簡潔で、日常的に使いたくなる言い回しである。
…ならないですか、そうですか。

●絶対的な優位性や権威の存在を明示/暗示する語句
導く、束縛、支配、再構築、追放、虐げる など、強大或いは絶対的な何者かの存在を示す語句は、それに対する抵抗などを想起させ、中二受けが良いと思われる。
・『奪われし光』(停電)
「奪われし」という表現が、災害や故障などという抗いがたい存在を連想させる。
・『導かれし流動の交錯』(インターチェンジ)
「導かれし」から(社会の)システムという絶対的な制度が暗示され、また「車の流れ」をある種の抽象化によって「流動」とし、直接の言及を避けた。
・『ヒトに見えざる世界の監視者』(顕微鏡)
「監視者」という語が、顕微鏡で見られる者たちからは決して干渉できないスケールの「人間」の強大さを示すと同時に、「ヒトに見えざる」という句から、その人間ですら微小世界が見えないという物理的必然性の絶対性を暗示する。
表現の練度は今ひとつ。
・『閉ざされし命の箱庭』(水槽、虫かご)
「箱庭」から、内部の存在を観察する管理者がいるということを暗示し、また「閉ざされし」により、その管理が絶対的であり逃れられないことを示す。
個人的にかなり気に入っている表現。

●送り仮名を伴う語と熟語の選択
「解放(名詞)」と「解き放つ(動詞)」、「逃げる(動詞)」「逃れる(動詞)」「逃亡(名詞)」など複数の言い回しがある語句は、まず品詞を適切に選び、その後ありきたりなものを避ける。とりあえず「逃げる」とかはありえない。絶対「逃れる」の方がいい。このセンスがわからない人はたぶん中二病を理解できないだろう。
例は略。

●「し」で接続
「○○されし××」「○○せし××」など、修飾で「し」で終わる語は非常に好まれ、濫用されし傾向にあり。
しかし「○○されし△△に◇◇せし××」など似たような語尾を乱発するとすぐにダサくなる。小説などで「○○だった。○○だった。…」などと連発しないのと同じことだ。このような場合「纏いし」→「纏いて」、「眠りに就きし」→「眠れる」、「秘めし」→「秘めたる」などのような書き換えが必要となる。
この辺はセンスというよりは言葉を扱う力が要求される。オヤジギャグや漫才とか物書きとかで言葉の言い換えや連想に慣れている人には造作もないことだろう。
例は略。

●一人称、二人称
会話や対話では「俺、私」「貴様、お前」などが、修飾(所有格)や目的格、あるいは対話でない呼びかけや呪文などでは「我(我が○○)」「汝」などが使われる。
多数に対しては、状況に応じて「愚民」「愚衆」「諸君」など様々なものが使い分けられる。
個人的センスではあるが、「我輩」とかはちょっとナシかな…
例は略。

●復活や解放など、失われた何かを取り戻すことを明示/暗示する表現
抗う、解放、逃亡、蘇る、再び などの語はしばしば使われるが、これらの抵抗の概念は、前述の絶対的な力などを天下りで無条件に受け入れないためのものであり、非常に重要である。
ただし、抵抗する相手の絶対性を名言しては説明的になってしまうため、暗示しつつ主張しすぎないように(あくまで主題は抵抗なので)する必要があり、難易度は高い。
また、稀に「強大な力により、普遍の/暗黙のルールを破る」という、力による絶対性への抵抗を示すためにも使われる。
・『万物に秘められし力の反逆』(原発事故)
原子(燃料)から支配者たる人間への抵抗、或いは人間の仮初めの支配に屈してきた強大な自然の復権が表現されている。
・『時を越えて蘇りし安息』(振替休日)
逆らえない時間の流れや避けられない休日の活動日への抵抗と勝利が表現されている。

●英語の利用の問題
仮にも高校生以上ならこの程度のミスを犯すことはあってほしくないが、かっこよさげな英単語を使ってはみたものの品詞が滅茶苦茶であるケースは多く見受けられる。正直萎える。
例として挙げるには何かが違うかもしれないが、某アニメ(原作はラノベ)の"vanishment this world"なる文は、
・vanishmentは名詞である
・そもそもvanishは自動詞なので目的語をとらない
など、ネイティブ中二病の中学生にありがちなミスを再現しており、それを繰り返し聞かされる視聴者は、過去の中二時代の自らのミスの連想とそれに伴う恥ずかしさなどを味わわされるという、非常によくできた演出であった。

…話が逸れた。
英語を使うもうひとつの問題点は、聞き手と発話者の語彙や構文の知識の差である。
面倒な構文はそれだけで素直な理解を妨げる。
単語は、例えば一口に「消滅」といっても vanishment,disappearance,extinction、「虚無」「虚空」「無」に至っては void,hollow,nil,nonexistence,nought,emptiness,nothing,vacancy などかなりの語が挙げられる。この中から適したものを選択するのには、かなりのセンスか知識が要求される。正直かなりキツい。
聞き手の語彙の問題は、例えばゲームなどで共によく使われる"enhance"と"enchant"の違いを即座に説明できるか?などということから明白である。これにすぐに正しく答えられるものは多くない。
またカタカナにするとカッコ悪い場合なども考えられ、一般的にはこれらの問題点を回避・解決できるような人か、そこまで気が回らないネイティブ中二病な人しか使わない技術である。
一応参考までに俺が作った成功作(自信ないけど)を挙げておく。
・『失われし共鳴連鎖の記憶』【disappeared memory of sympathetic connection】(twitterでのRT(リツイート)取り消し)

●ルビ(振り仮名)
時刻《とき》や宇宙《そら》などありがちなものも含め、「誘い《いざない》」を「誘い《さそい》」と読ませないためにも、特殊な読み方をさせる場合はルビが必要なことは多い。ただし、これはあくまでアクセントであって、多用しては鬱陶しさが増すだけ(はじめから別の字で書けという話)であることに注意。
場合によっては、語句でなく文章全体をひとつとしてルビを振るのも手である。
あと、カタカナを振る場合はセンスの影響は大きいので練習しておくと良いかもしれない。
例は略。

●専門用語
こちらは人によるので詳しい解説は省略するが、
ASCII.jp:なれる!SE 間違いだらけの?IT用語辞典(中二版) [ http://ascii.jp/elem/000/000/760/760389/ ]
などが一般の人にも雰囲気をつかんで楽しんでもらえることと思う。
ITに限らず専門用語はカッコイイの多いし、誤用でなければ積極的に活用すれば良いと思われる。
一応作ってみた例を挙げとく。
・『汝が知覚せしを得ん《WYSIWYG》』
ウィジウィグ。"What You See Is What You Get"の略なのだが、まあMS W○RDとかみたいなやつ。名前を聞いたことがなくても、この技術には誰もが馴染みがあるはず。

●呪文/呼びかけ/セリフ的な
何かのモーションに伴って叫んだり、特定の状況(ツッコミとか)で発するもの。
有名な例(俺が作ったのではない)を挙げると、
「クッ…結界か…!」(ドアノブに触れて静電気がきたとき)
みたいなやつ。
最後に何か(主題や対象)を叫ぶと作りやすい。
文字媒体でやるときは「…!」はデフォ。あと「クッ…」なども人気(?)。
適当に作ったの晒しとく。
懐中電灯:「闇を払い、再び我が手に光を! ライトニングソード!」
レーザーポインタ:「我が手に灯る光よ、万物を射抜く一筋の矢となれ! レーザーポインター!」
zipパス解析:「隠されし真実よ、いま再び我が前に姿を表さん! 鍵解析《パスクラック》!」
「まぶしい」:「光が目に刺さる…!」
「たちくらみ」:「クッ…まだ血が足りぬというのか…!」
「クソして寝ろ」:「汝の内なる食物の残滓を解き放ち、永久(とわ)の眠りに就け!」

うーん…とりあえずこれだけ意識しておけば普通に元中二病だったと言ってもしばらくはバレないのではないだろうか。
はじめはリアルで喋らず、twitterとかのSNSで毎週1つはこういうのを投稿するとかしていくと良い(何がだ)。

では諸君のイタい過去に黙祷しつつ、筆を擱くことにする。
アディダス!(スペイン語で「さようなら」の意)(しつこい)(流行れ)

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